経営者
理念が空回りする組織の共通点:社員と会社を「つなぐ」ために
経営がうまくいかない会社に共通するもの
経営が停滞している企業の現場を歩くと、社員の皆さんの間に共通した「空気感」が漂っていることに気づくことがあります。
それは、こんな切実な本音から来るものです。
「上に言っても無駄だ」「どうせ、頑張るだけ損をするし」「会社の考えなんて、自分には関係ない」「自分がやらなくても、誰かがやるだろう」
不満や改善への提案を口にする機会がないままに、いつしか会社に「期待すること」を諦め、入社時のやる気も情熱も消えてしまった社員。そして理念は壁に掲げられているだけで、誰の心にも響かない―
これは一見すると、社員本人の性格や意欲の問題に見えます。
しかし実際には、能力や意欲がもともと低いケースはほとんどありません。むしろこれは、社員と会社・社員と経営者の「つながり」が失われているゆえに起こる悲劇です。
自分の仕事がどこにつながっているのか。 会社が何を目指しているのか。 何を基準に評価されるのか。こういったことが見えない組織では、主体性も意欲も生まれません。これは精神論ではなく、会社の「構造」と「つながり」の問題なのです。
経営者の理念が伝わるアクションとは
理念を掲げている会社は多く存在しても、理念が実際に現場を動かしている会社は多くありません。ところが経営者にたずねてみると「日頃から伝えている」という返答が返ってくることがあります。
それでは「伝える」とはどういうことでしょうか。
そもそも社員が経営者と、そして会社との「つながり」を感じていなければ、どんなに理念を伝えても響きません。さらに、理念は端的な「言葉」だからこそ、抽象的で理解が難しいものでもあります。
例えば社長の語る言葉(理念)と行動が一致していなければどうでしょうか。「挑戦しよう」と日頃から口にしているのに、新規事業への投資を渋ったり、失敗を社員だけの責任にしていたら…「社員は家族」と言いながら売上の未達だけを厳しく指摘するばかりだったら…また逆に、社長が社員と展望について語る機会はおろか顔を見る機会すら無かったら…そんな会社で働いていたら、社員はどう感じるでしょうか。
確かにどれも、経営者としての会社の財務を考えての行動であったり、多忙ゆえのことかもしれません。しかし、経営者が進める経営の背景や数字を適切に社員へ共有していなければ、「社長が何を考えて行動しているのか」は、社員には全く理解できないのです。語られないことは伝わらず、絆のない相手の言葉は心に届きません。これは、私的な人間関係においてとまったく同じ構造です。
社員に「財務」を語ることが、社員との信頼関係につながる
抽象的になりがちな「理念」に対し、具体的な数字「財務」は社員にとってはるかに理解しやすいものです。経営者が社員に対し、財務を説明し、目に見える数字を通じて理念=経営における自身の考えを伝えることができるなら、このアクションそのものが、社員と経営者の間の「つながり」を生みます。そしてここで生まれた「つながり」こそが、社員の中で会社の「理念」を「自分ごと」へと変えていく最初の一歩となるのです。
もちろんその前に、経営者自身が自身の理念と会社の財務をしっかりと見据え、もしも信頼を損ねる要素があるのなら、その改善に着手しなければなりません。しかし、その過程で社員と理念や財務を共有するからこそ、互いに信頼関係を築き、同じ目標を目指すことができるようになるとも言えるでしょう。
次回は、財務、そして理念を理解した社員がどのように変化するのかについて語ります。
決算書の基礎から、現金損益®︎を活用した“つぶれない経営”の実践まで。
経営に役立つ知識をわかりやすくお話します。