経営者
財務を学ぶと社員が変わる──理念が機能する現場へ
現場の社員が変わる瞬間とは
前回は、社員のやる気や主体性の低下は個人の問題ではなく、会社との「つながり」が失われている構造の問題であること、そしてその「つながり」を取り戻す手段のひとつとして「財務の共有」があることについてお伝えしました。 では実際に社員が理念と財務を理解し、その2つが結びついたとき、組織に何が起こるのでしょうか。
それは、「それまで受け身だった社員が、自ら考え行動するようになる」という変化です。
この変化は、財務を学んだ社員が「会社の利益がどのように生まれているのか」を見えるようになることから始まります。売上やコストがどのように結果に結びつくのかが分かると「どこに手を打てば会社にとってプラスになるのか」が具体的に理解できるようになり、これまでは言われたことをこなすだけだった社員も「どうすれば会社が良くなるのか」「今何をすべきか」を自ら考えるようになります。
例えば、これまでは見過ごしていた固定費の無駄に目を向けるようになるのも、その変化の一つでしょう。売上や利益といった結果だけでなく、その裏にある構造や意思決定の背景が見えることで、自分の仕事が会社全体のどこにつながっているのかを理解できるようになるのです。仕事とは言われたことをただ行うのではなく、自分で見極め判断するもの──仕事に対する考え方がこう変化した時、社員の行動は大きく変わります。
また、財務という共通の判断軸を持つことで、仕事のスピードにも変化が生まれます。社長や上司に確認しなくても意思決定できる範囲が広がり、目先ではなく「先」を見た判断ができるようになることで、組織全体の動きも速くなるでしょう。
「自分ごと」になった理念が組織を動かす
会社の両輪となるもう一つの変化、それが理念を共有したことでのマインドの変化です。 前回お伝えしたように、多くの会社ですでに存在している「理念」が現場で機能しないのは、社員がそれを「自分には関係ないもの」として捉えているからです。 しかし、財務という数字と会社の方向性という理念、そして自分の仕事が結びついたとき、理念は単なる言葉ではなく、組織を自走させるエネルギーとして機能し始めます。
例えば、これまで目の前の業務をこなすことだけに意識が向いていた社員が、「この判断は会社の目指す方向に沿っているのか」と考えるようになります。「なぜこの仕事をするのか」という問いに対しても、理解が深まり、自分の言葉で説明できるようになります。 これは、理念が社員の中で“翻訳された”状態とも言えます。会社全体の方向性や想いを理解し、その過程で「つながり」を得たことで、これまでの「不満や疑問があっても改善を提案できない」と諦めていた状態から、「理解し伝えようとする姿勢」へすら変わっていくのです。
さらに、自分の行動や成果が会社の理念とつながっていると実感できれば、評価や対価に対する納得感も生まれます。 「どうしたら会社が儲かり自身の給与に反映されるかが理解できる」仕組みが腹落ちすることで、これまで「頑張っても評価されない、頑張ると損する」と感じていた状態から、「自分の行動が会社にどう貢献しているか」を理解できる状態へと変わるのです。
そしてこの社員ひとりひとりの変化がやがて組織全体へと広がり、会社全体を回すエネルギーとなっていきます。
次回は、この変化が組織にどのような状態をもたらすのか、「自走する組織」とは何かについてお伝えします。
決算書の基礎から、現金損益®︎を活用した“つぶれない経営”の実践まで。
経営に役立つ知識をわかりやすくお話します。